記者会見

未分類 2011年9月05日

明らかに上から目線で記者の質問に答えているのはミステリへ作家の工藤恭一だった。
横柄な態度でありながら誰も文句を言わないのは、この会見がミステリー界では最高峰といわれる蔵河修平賞をとっていたからだった。
恭一はノック式のボールペンの音をたてながら質問を聞いていた。
「今回の受賞作の『黒足の秘密』は、一週間で書き上げたって話は本当ですか」
記者の一人が質問をした。
「正確には、6日だ」
勿体つけるように恭一が答えた。
答えが終わるか終わらないうちに次ぎの質問をしようと記者たちがアピールを始める。その姿を楽しむように見ていた恭一は、ボールペンで次ぎの質問者を選んだ。
「一切書き直しをしないという話ですが、準備に時間をかけるということなんでしょうか」
選ばれた記者が質問した。
「準備なんて・・・すべて頭に浮かび上がるんですよ。そうだな・・・」
恭一は少し間を置いた。
「・・・頭の中にある作品を清書しているって感じですか。書こうと思ったときには、もう出来上がっているんですよ」
恭一は自慢現微笑んだ。
その時、指名もされていない一人の記者が質問を発した。
「それは、既にもう出来ていた作品をただあなたが写したと考えていいんですか」
一瞬会場が静まり返った。そして、一気に喧騒へと変わった。
記者たちのどよめきとフラッシュが会場を包み込んだ。
恭一の隣におとなしく座っていた編集者の水野麻衣があわてて立ち上がった。
「そろそろ時間ですので、会見は以上とさせていただきます」
恭一を押し出すように連れ出した。
会見場はさらに騒がしくなったが、原因を作った記者は親指をかみながら恭一を見つめていた。